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住宅の屋根に無償で太陽光パネルを設置するプロジェクトが愛媛県内で進行中だ。新電力の坊ちゃん電力が県内の工場で製造した太陽光パネルを使って、電力の小売と組み合わせた事業スキームで取り組む。2016年度内に250世帯へ、2017年度には他県にも広げて1000世帯以上の導入を目指す。

夏目漱石の有名な小説から命名した新電力の坊ちゃん電力が、2016年11月から「フリーソーラープロジェクト」に取り組んでいる。坊ちゃん電力の親会社であるデンカシンキの松山工場で生産した「えひめ産」の太陽光パネルを利用して、住宅の屋根に無償で設置するプロジェクトだ。

太陽光パネルとパワーコンディショナーに加えて、NTTスマイルエナジーの太陽光発電向けエネルギー管理サービス「エコめがね」で発電量・消費電力量・余剰電力量を算出する。家庭内で消費して余った電力は坊ちゃん電力が買い取る仕組みだ(図2)。買取価格は固定価格買取制度の単価よりも1円高く設定して、さらに坊ちゃん電力から電力を購入する場合には1円を上乗せする。

このプロジェクトを実施するにあたり、坊ちゃん電力は投資家を集めて太陽光発電システムを需要家に提供するスキームを採用した(図3)。米国で太陽光発電の主流になっている「第3者所有モデル」と呼ばれる方式だ。住宅に太陽光発電を広める効率的なスキームで、投資家は一定の利回りを見込める。国内では坊ちゃん電力のほかに、日本エコシステムが自社で太陽光発電システムを所有して需要家に提供するスキームを展開している。

坊ちゃん電力から太陽光発電システムを導入した需要家は設置から10年を経過すると発電システムを安く購入できる。さらに20年目には無償で譲り受けることが可能だ。この間の保守・メンテナンスは坊ちゃん電力が無償で提供する。一方で投資家は10年間にわたって年12~15%程度の利回りを得ることができる。投資額は1件あたり最低で180万円程度(出力6キロワットの太陽光発電システムに相当)が必要になる。

坊ちゃん電力が目指すのは、「えひめ産」の太陽光パネルを使って再生可能エネルギーの電力を地産地消することにある。現在は小売で販売する電力のうち10%程度が太陽光発電で、残りは電力会社による常時バックアップに加えて卸電力市場から調達している(図4)。これを2030年には再生可能エネルギー100%に転換する計画で、他社の発電所を含めて再生可能エネルギーの買取量を拡大していく方針だ。

愛媛県内では四国電力が原子力発電の「伊方発電所3号機」を2016年8月に再稼働させた。九州電力の「川内原子力発電所」に続いて全国で2カ所目の再稼働だが、県外を含めて周辺地域の住民のあいだには不安の声が根強い。 坊ちゃん電力は電気料金の単価を四国電力よりも低く抑えて需要家の拡大中だ。一般的な住宅向けの「坊ちゃんプラン」は最低料金と2段階の電力量料金を組み合わせたシンプルな体系で、四国電力の標準プラン(従量電灯A)よりも単価を安く設定した(図5)。オール電化住宅向けにも四国電力と比べて安価なプランを提供している。

2016年4月に電力の小売を開始して、11月末までに約4000世帯の契約を獲得した。このうち6割は愛媛県内で、2割は四国の他県、さらに東京電力・関西電力の管内にも小売を拡大して全体の2割を占める。ただし太陽光発電のフリーソーラープロジェクトを導入した家庭は愛媛県内でもまだ少数にとどまっている。 坊ちゃん電力はフリーソーラープロジェクトの導入件数を2016年度内に250件まで増やしたうえで、2017年度には1000~1200件に拡大させる計画だ。当面は愛媛県を中心に四国電力の管内が対象になるが、瀬戸内海を越えて中国電力の管内に展開することも検討している。

スマートジャパン【えひめ産の太陽光パネルを無償で設置、原子力の立地県で電力の地産地消に挑む】
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1612/09/news019.html